借地権評価における譲渡承諾料

借地権の評価において、契約継続中に授受される一時金で、増改築承諾料・条件変更承諾料・更新料で既に支払われている場合は借地権価格を構成するのに対し、名義書替料乃至譲渡承諾料は、一般に、地主の手数料であり、借地権価格を構成しないと解されています。

一方、評価手法であるDCF法における復帰価格の査定は、通常「売却価格ー売却費用」であり、平成27年4月発刊「要説」p197に「当該純収益を得る為に必要な費用があればこれを控除する」となっています。

また、同p341には「譲渡承諾料又は名義書替料は…手数料的なものと解され…直ちに借地権価格を構成する要素とはならない。しかしながら、将来の転売を想定する場合には借地権者における将来の支出として、借地権の価格に影響を与える場合がある。」となっています。

更に、日本不動産鑑定士協会連合会における研究成果物である「証券化対象不動産の鑑定評価に関する実務指針」のp46に「売却費用は、原則として仲介手数料等相当額を見込んで査定する。なお、借地権付建物の場合で、譲渡承諾料等が慣行的に授受されると判断される場合には、当該譲渡承諾料等も売却費用に含むものとする。」となっています。(以上、「連合会」確認事項)

従って、借地権をDCF法で評価する場合には、譲渡承諾料を売却価格から費用控除する必要がありますが、「基準第3章」では、「証券化対象不動産の鑑定評価における収益価格を求めるにあったては、DCF法を適用しなければならない」とすると同時に「この場合において、併せて直接還元法を適用する事により検証を行う事が適切である」とされています。

とすれば、DCF法でのcash flow計算期間乃至保有期間がせいぜい5~10年とすれば、直接還元法の算式は永久還元式ではなく、インウッド式とし、DCF法で求めた復帰価格の現在価値をインウッド式の第2項の分子とすべきものと考えられます。

この点、永久還元式を用いるとすると、売却費用は、還元利回りで調整すると考えれば、これは、調整の仕様がないと考えます。

しかし、「転売」が無限の彼方で実現する(=転売しない)とすれば、その現在価値は0であり、通常の純収益を還元すればいいという事になります。

と言う事は、通常の借地権評価においては、譲渡手数料は借地権価格を構成しないが、転売を想定する証券化対象不動産等に係る借地権評価においては、譲渡手数料は借地権価格を構成すると言う事を表しているに他ならないと考えられます。

一般に、不動産の鑑定評価は、「買主の観点」からなされるとされていると思いますので、本来、全て転売される事が前提とされているという事ではないでしょうか

借地権評価において、DCF法を適用する場合、譲渡承諾料を売却費用に含めるとする立場からは、譲渡承諾料は「借地権価格を構成する」と、一般に解、「DCF法と併用する場合の直接還元法の算式はインウッド式を用いる。ただし、(収益価格を求めるに当たって)直接還元法だけを適用する場合、 『転売』が無限の彼方で実現すると考えられときには、永久還元式を用いて差し支えない(=譲渡手数料は、借地権価格を構成しているが、その現在価値は0である)」と考えるべきでないでしょうか

従前の譲渡承諾料は借地権価格を構成しないと一般に解する立場は、証券化対象不動産等の広がり、即ち、ご挨拶で述べた「不動産利用の多様化と複雑化」につれ、評価手法との関連で、もはや、維持できなくなってきているのではと愚考する所です。