Social Framework Ⅱ


 前回のSocialFramework14迄で、Def-Pansion、言う所の価格下落下に於ける経済拡大が、ケインジ
 アン的立場からもマネタリスト的立場からも、(実質)賃金低下乃至生産性上昇により引き起こされる
 事が示された。

しかし、StagーFlation,言う所の物価上昇時に於ける経済縮小がケインジアン的立場からもマネタリスト的立場からも、同じ分析手法から(実質)賃金上昇(所謂コストプッシュインフレ)乃至生産性低下によって引き起こされる事、については経済学界・実業界からも、現在、定説・当たり前の様に主張されるのに対して、前者は、未だ主張されるのを聞いたことがない。

今年も"春闘”を控え、安倍政権側からは、'賃金’引き上げへのジャブを経済界側へ繰り出してはいるが、野党が、"デフレ"の原因は資本側の内部留保(≒搾取)のため込みすぎと追求しても、政権側は"デフレ”状態は脱したと言い逃れるだけであり、経済界は、"賃金”は、労働側との交渉によって決められるべきだとの立場を崩さない。

片や、国際経済競争力の観点からは、日本の「生産性」は、出生率減少ー人口減少から”落ちる”一方だ,との主張から、"現状肯定"的に、アタフタと、立法権の放棄とも取られかねない委任立法任せの入国法改正が為されている。

なぜこの様な膠着状況を抜け出せないのか                           そこで、以下の図を見て戴きたい。

これは、ケインジアン的AD-AS分析をA・B二カ国で対比しつつ行ってみたものである。

 

 

まず、A・Bそれぞれの国に於いてAD1AS1によってA:Y・B:Y及びPにおいて均衡していたとする。

この時、B国において生産性の改善が見られAS曲線がAS2に変化したとすると、B国における均衡は、AS2AD1の交点に移動して、B:Y1及びP1に、所得拡大・価格低下の所謂Def-Pansionの状態が出現するはずである。

この際、SocialFramework14迄の1国内の分析と違い、今は、B国のAS曲線の変化がA国にどのような変化を起こすかをみて見ようとする二国間のAD-AS分析を行っているところから、B国に於けるPからP1への価格低下は、A国内における需要増加を惹起する筈であり、それはA:AD1とP1の交点A:Y1とA:Yの差に異ならない。

とすれば、B国のSupplyerが価格P1において直面する需要量はB:Y1にこのA国に於ける需要量増加を加算したAB:Y1になる。

従って、AS2に変化した後のB国のAD曲線は当初均衡点B:Y・PとAB:Y1・P1とを結ぶAB:AD1という屈曲したAD曲線となる。

そして、B国における新しい均衡点はこのAB:AD1AS2の交点AB:Y*とP*になる。

この際、B国におけるAD曲線は、新均衡点を通るB:AD*に右シフトした、と見做す事が出来る。

このP*におけるB国の新しい均衡はA国に対し、P*とA:AD1との交点A:Y*での均衡をもたらす筈である。

とすれば、A国におけるAS曲線は、A:AS1とP*の交点から水平に新均衡点A:Y*迄伸び、そこから垂直に元のA:AS1迄伸びて(図の緑の破線)、そこからは元のA:AS1になるという屈曲したAS曲線を考えても、また、図に緑線で示した新均衡点から垂直に元のAS曲線に戻る、乃至、新均衡点を通過し元のAS曲線が垂直になるYで垂直になるA:AS2を考えてもよいものと思われる。

新均衡点A:Y*が元のA:AS1が垂直になるY以下であれば、当然A:AS2も、元のAS曲線が垂直なるYで垂直になる

この分析によるとB国に於ける生産性改善はB国における所得増加・価格低下のみならず、”貿易”を通じてA国に於けるDef-Pasionを惹起しうると云うことになる。

以前、”乗数効果その2”で、「日経H27年6月29日付の前独連銀総裁A.Weber氏のインタビュ-記事で、氏は”90年代の世界の物価上昇圧力が低くなった主因は、中国の世界経済への参入を始めとするグローバル化”だ」と発言している旨記載していたが、無論、氏がどのような理論的観点からそのような発言をしたかは記事に書かれているわけではなく、乗数効果の効果発現の観点から、”低賃金労働”と技術コピーによる”高い生産性”によって、急速に”世界の工場”になっていった中国による”低価格”輸出が、’80年代前半位まで高い政策効果を~乗数効果を通じて~誇った財政政策乃至公共投資が、’90~’00代にその効果を発現し得ず、所謂Def-Pansionの時代に入っていった理由なのだろうと漠然と考えて引用していたに過ぎない。

従って、Weber氏の発言の理論的根拠が上図の如き二国間AD-AS分析に依るものかどうかは別途、他国からの”低価格”輸出が、自国のDef-Pansionを惹起すると理論づけられる、とした場合、それは、政治経済乃至経済政治的に主導・主張しうるものか

現在、EUからのBrexit、Trumpの純粋無邪気な米国第一主義~TPP離脱・米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)推進等が、自由貿易主義・保護主義排除の観点から声高に批判されている中、”デフレ”脱却の為には、”低価格”輸出はやめろとはとても”経済学”的には主張されうるものではないことは明らかであろう。

また、国際競争力を高める!為に生産性を(A国で)高めれば、それは、また、(B国で)Dfe-Pansionを惹起し、一種のデフレスパイラルを起こすのも明らかである。

従って、勢い、AD曲線を右シフトさせる~M;マネーサプライを増やす、という金融政策しかない? 異次元の金融政策に頼らざるを得ない、と言う構図が見えてくる。                しかし、この頼みの金融政策も利子率0~流動性の罠~乗数効果の発現不全等の中で、その期待された効果を発揮していない事は明白である。

この様に見てくると、Stag-Flationの際にはケインジアン的AD-AS分析が主導されたにも関わらず、Defーpansionの場合には、このAD-AS分析が主張されないのも理解されるように考える。

即ち、Stag-Flationの場合には、その要因たる賃金上昇乃至生産性低下に対して、(適正水準への)賃金切り下げ・生産性上昇が有効な経済政策として提起されうるのに、Def-Pansionにおいては、資本側から(適正水準以上への)賃金引き上げは不可能であるし、ましてや経済政策として生産性上昇努力をやめろとは言えないからである。                              Def-Pansionの原因は把握?し得たとしても有効な経済政策手段が見いだし得ない、乃至、そのような政策は経済学的テーゼである自由貿易主義に反するものに成りかねない、からであると考えられる。

所で、上記の二国間AD-AS分析は、筆者が全く独自に、勝手に試みたものであり、(斯様な分析をされた方乃至論文があるかも知れないが存知していない)、経済学理論的に正しい手法・分析なのかは分からない。

この点、AD-AS分析の基礎となっているIS-LM分析においては、貿易が含まれる開放経済を分析するためにBP曲線を加えた所謂マンデルーフレミング・モデルによる分析手法がある。

次回は、このIS-LM-BP分析により、この二国間AD-AS分析が首肯され得るものとなるかどうかを見ていきたいと思う。