SocialFramework Ⅱ-3

前ページに引き続き、本ページでは、”輸出国”であるB国のIS-LM-BP分析を通じ、B国の二国間AD-AS分析の検討を行っていこう。

 

上図において、まず、AD曲線とAS曲銭の交点P・Y*において均衡していたとすると、IS-LM-BP図においては、IS(eX)LM(P)BP(eX)の3曲線の交点Y*・r*で均衡していたとする

そこで、輸出国たるB国において生産性の上昇によりAS曲線がASに下方シフトしたとすると、AD曲線との交点P1Y1に新しい均衡が移動する。この時、左図のLM曲線はLM(P1)に移動しIS(eX)との交点r1・Y1に均衡が移動するものと思われるが、ここで、我々は、先の二国間のAD-AS分析により、価格P1では、輸入国たるA国において、SFⅡ-2から、所得がD+迄増加することから、A国において輸入需要が、D+からA国の当初のY*を差しい引いた分(D+)だけ増加することを知っている。従って、B国の生産者はY1にこの(D+)を足した所得(右図の緑の垂直破線)がP1と交わる交点と、当初均衡点P・Y*を結ぶ直線(緑の右下がり破線曲線)という屈曲した需要線に直面していると言って差し支えなく、この需要曲線とASとの交点P*・Y**が新しい均衡点となる。

とすると、左図のLM曲線はLM(P*)に左上方シフトすると共に、IS曲線は、輸出が増加することから右シフトし、LM(P*)上でY**となるIS(eX*)迄移動することになり、rはr**となる。この時、r**はr*より大きいので、資本収支が改善する為、eが(B国の)通貨高となり、経常収支悪化の必要があるから、BP曲線は上方シフトし、BP(eX*)となり、最終均衡する事となる。

そして、B国のAD曲線は、P*・Y**を通るAD(eX*)にシフトしたと見做して良いことになるが、この際、SFⅡ-2の分析からは、このAD曲線は、一旦、P1(D+)を通るAD(eX*)より更に右側に上方シフトし、”為替”のAuto-Stabilizer機能によるA国側からの”輸出”により、最終的にAD(eX*)に、キックバックされる過程があると考えたがよいとの見方もあり得る。

しかし、P1(D+)という交点は、B国に於ける生産性上昇に伴うAS曲線の下方シフトに対し、新しい需要曲線が通過すべき交点を指示すべきだけのものであり、この需要曲線(先の右下がり緑色破線)とASの交点が新均衡点となることから、AD曲線は、直接的にAD(eX*)にシフトすると考えて差し支えないと思われる。

一方、ASへのシフトにより”均衡”がP1Y1に移動した際、”通常”のIS-LM-BP分析では、IS(eX)LM(P1)との交点でのr1はr*より低いため、資金流出→資本収支悪化→経常収支改善の必要→eの自国通貨安・e+への上昇→BP曲線の下方シフトとなると共に、e+→eX・輸出の増加→IS曲線の右シフトが起こり、”均衡点”は、BP(eX)の下方でIS(eX)の右方のLM(P1)上に、一旦成ると考えるものと思う。そして、この”均衡点”から、P*への変化に伴い、最終均衡点r**・Y**へ各曲線がシフトすると考えるべきとするものと思われる。

実は、この点を前提として、IS(eX*)BP(eX*)・AD(eX*)としており、IS(e*)BP(e*)・AD(e*)と、輸入国たるA国の分析の時と違い、していなかったのである。

今一度、BP式を見てみると、

       BP;(eX - mY) + k * ( -r*)= 0

である。                                          先の、輸入国であるA国の分析で見たように、輸入の増減が、所得Yの増減で決定されるように、輸出の増減は、資本収支(-r*)の増減に伴う、eの増減により決定されるのである。

従って、BP式自体から言えば、BP曲線のシフトに際しては、資本収支の悪化に伴うeの上昇、e+・自国通貨安により,一旦、BP曲線は、下方シフトするとする考えが正しいと言うことになる。

しかし、このIS-LM-BP曲線分析は、二国間AD-AS分析の検証を行うことを目的として行っているものであり、そこではB国の生産性上昇に伴い、Pが低くなり、B国の所得が国内的に増加するのみならず、A国にも輸出され、A国の所得も増加して行くのではとのシナリオが前提としてある。

とすれば、A国の通貨が”輸入”に伴い自国通貨安・e+に成ることは”感覚的”に納得し得ても、B国の通貨が”輸出”に伴い自国通貨安・e+に成るとは、”感覚的”に納得し得難いものが筆者には残る。

無論、一旦、輸出に伴い自国通貨高・e-の方に振れても、”為替”のAuto-Stabilizer機能により、キックバックする・e-に成るという事はありうると思われ、AD(eX*)へキックバックするのではと言う先述の考えに合わせ、一旦、BP(eX*)の上方にBP曲線がシフトし、そこからBP(eX*)へ戻るという過程はあり得る。但し、当初から、BP曲線が下方シフトするという考えには、どうしても、なじみ難いものがある。

この様に、何らかの矛盾を感じるために、敢えて、IS(eX*)等の標記にしているわけであるが、ここに、もう一つ、考え得る事がある。

即ち、先にBP曲線等の変化の様子を見た際に、通常は定数と見做されるXも、経済構造の変化に伴い、当然、変化するわけであり、その際、X+となれば、輸出が増大する事から、IS曲線は右シフトする事を示しておいた。                                      従って、IS(eX*)への右シフトの際は、輸出が増加する・XがX+になることによるものと考え、BP(eX*)への上方シフトについては、輸出増大による自国通貨高・-によるものと考えるわけである。

この様に考えれば、”常識的”に極めて受け入れやすいものにはなるが、致命的な問題がある。    それは、Xの変化をどう捉えるか、                              IS-LM-BP分析においては、先述の通り、式が三本しかなく、変数は、r・Y・eであることから、新たにXを変数としては捉えられないのである。

この様に、理論的には、やや欠陥を抱えているシフト過程乃至ぞの図示であるが、最終形態図としては、取敢えず、妥当と判断した場合、SFⅡの二国間AD-AS分析の際には認識されていなかった、輸入国たるA国におけるAD曲線の右シフトに相応する、A国の輸入需要量の増加を、輸出国たるB国の需要曲線に反映させられていないことが判明した。

よって、SFⅡー2・3において行ったBP曲線を加味したIS-LMーBP分析によって検証した事を踏まえて、二国間AD-AS分析の再分析を行う事とするが、やや、ページが長くなったので、ページを改めることにしたい。