HFT(High Frequency Trade-高頻度取引)乃至HST(High Speed Trasd-高速取引)について、筆者が、その実際的仕組み・取引に関しては、全く知ることがないので、雑誌やWikipedia等に書かれている事に基づいての”印象”しか述べることは出来ないのであるが、前ページに記述した、IS曲線が”微振動”する間に、ある一定の時間が経過すると、de±がe±に変る、即ち、eが為替,ExchangeRateのeでなく、Earningのeに変っているのが、HFT乃至HSTではないのか、と言うのが筆者のイメージ・印象なのである。
今の国会ではなく、もう1年以上前になるかと思うが、麻生大臣・副総理が、このHFTについて質問を受け、1分間か1秒間かはハッキリしないが、”取引回数は、優に何十万回になるだろう”旨の答弁をしたと、記憶している。
そこで、仮に、1分間に1百万回として計算すると、1秒で16、666回になるので、1回・1取引当たりに要する時間は、0、00006秒、即ち0.06㍉セカンドとなる。
そして、この1回の取引に要する時間の単位は、WikipediaをSurfingすると、10億分の1秒・㌨セカンドになっているという。㍉セカンド即ち千分の一秒の次の単位が㍃セカンド・百万秒の1だから、㌨セカンドと言えば、㍉セカンドの百万倍となるので、筆者が先の答弁の”ウロ覚えの当時”から、取引速度は1万倍以上になっている、とも考えられる。
そして、この㌨セカンドの取引速度になると、”取引所”からの”立地”が取引にかかる重要なファクターになるという。即ち、光といえど、ご存じの300,000km/秒しか進めないわけであるから、㌨セカンドでは30cmしか進めない!とすれば、取引所から300mの距離に位置する”業者”は、1,000㌨セカンド後には”情報”を入手出来るのに、同じく3kmに位置する業者は、10,000㌨セカンド後にしか同じ情報を入手する事しか出来ず、この間、9,000㌨セカンドの開きがある。
そして、先の取引速度が1万倍になっているものとしたら、取引に掛る意思決定に要する時間は6㌨セカンドにしか過ぎないから、”300m”業者は、”3km”業者が”最初”のと同じ情報を獲得するまでに、4回は取引をExcute・執行出来る計算が成り立つ。(1回の取引に掛る時間は、取引所に行って帰って、2,000㌨セカンド、また、取引所も業者と同等の取引処理能力を持つとして)
これでは、立地の差による、業者としての優劣は明らかであろう。
そして、これら、HFT業者の取引所の出来高に占める比率は5割を超え、国に依って違いはあるものの、6から7割にも現状達するという。
勿論、これらHFTを成り立たせているものは,コンピューターとAIであるのは間違いないが、論点は、何故にかくも高速化するのか、言葉を換えれば、高速化すれば何故に儲かるか、と言うことである。
元々”売買”によって、利益を挙げていくには、安く買って高く売るか、高く売って安く買うか、または、売買の仲介を行って手数料を貰うしか無いわけである。
前者は”買いポジション”か”売りポジション”を作る、即ち売買の当事者・Principalになることであり、後者は”売買の場”を提供する仲立ち・Brokerになることであり、先の”取引所”は、本来、”売買の場”を提供するBrokerであり、”業者”はProncipalと言うことになり、このPrnipalの行為は”裁定取引・Arbitrage"または、”鞘取り行為”と言われる。
筆者が、この”Arbitrage"・裁定取引という言葉を最初に聞いたのは、市場の中にある”高い”ものを売って”安い”ものを買い、(比較的に)”Risk"無しに利益を上げる"Trading"手法の一つ、としてであった。
しかし、この”裁定取引”という概念は、この様な債券や株等の投資上のTechnicに(狭義的に)使われる以上に、遙かに大きな含意があり、それは、”水が高きから低きにながれ、水平面が生じる”が如く、”市場における一連の(通常の)売買により、一物一価が成立”する、との、その”法則”の根拠を示すものである、と言うことである。
この法則は、個々の取引主体の取引動機は、単に利益追求という純粋に個人的・個体的な活動に過ぎずとも、それが社会全体として帰結されるときには、一物の価格が、相対的に価格が低い市場から価格が高い市場に”流れ"て行き、一価に収斂されて行く過程において、相対的に資源過剰な市場から資源不足の市場に資源が転移される乃至相対的に生産性の高い市場の"物”が低い市場の"物"を駆逐して行くことにより、資源の有効活用・効率化が、”市場の見えざる手”の働きにより、達成される、と言うものである。
所で、この裁定取引は、一般には、空間的・時間的・情報的に行われると言って良いと思われる。
空間的とは、所謂シルクロードにより東西の文物が交易され、大唐の文化繚乱を招来し、奈良の正倉院の宝物を伝来さし得た事に象徴され、上述のHFT取引所の立地も、一面では空間的裁定とも言える。
時間的とは、典型的な例としては、ワインの先買いが挙げられのではないかと思う。 これは、幾ら当たり年のワインとは言え、ヴィンテージ・ワインとなるには、熟成が必要で有り、収穫製造時の価格と飲み頃の時の価格とは比較にならないからである。 この時間的価格差・TimeValueと言う観点から見ると、Option取引自体も、その発祥が、アルキメデスのオリーブ油絞り器の賃借権にかかる物だと喧伝される様に、現在価格と将来価格との裁定・ヘッジがその理論的基礎であり、時間的裁定取引と言ってよい。
そして、売買取引自体が意思決定に関わるものである以上、裁定取引は空間的・時間的な物とはいえ、情報にかかる裁定・情報的裁定取引とも言えるが、殊に情報的と言ってよい典型的事例としては、ロスチャイルドが、Waterlooの戦いで、ナポレオンの敗戦をいち早く情報収集し、その後の財閥の基礎を築いたとされる逸話である。(この際、単純に、ロンドン取引所で買いに入るのではなく、一旦、売り浴びせておいて、売りが膨らむのをみて、一転、買いに入り、巨万の富を築いた、とも言われており、「ネイサンの逆売り」として、伝説化されている) また、上述、HFT取引も、如何に意思決定の敏速さを競うかと言う点で、正しく、情報的裁定取引とも言えるものである。
更に、法律的情報という見方をすれば、法的(情報)裁定取引という範疇も考え得る。 これは、法施行状態の相違を利用して、この間の裁定を行うものである。 例えば、TaxHavenのように、税制の違いを裁定して、”ベスト”な本店所在地・登記地を選定する。オランダや香港と日本相続税の相違により住所を定める。等の”行為”が裁定取引になると考えるが、この”法的”裁定行為となると、勢い、”違法性”を帯びやすくなる。 すぐに、禁酒法下のアルカポネ的密売や、現下のコカイン密輸が思い浮かべられるが、筆者が、”City"にいた頃、どうして、MerchantBankerになったのかと、弊社のAdviserの方に訊ねたら、言下に、「それは、”Insider"としての情報が入るからだ!」と言われたのを思い出す。
この点、上述のロスチャイルドは、Waterlooの戦いに先立ち、ナポレオンがイギリスの産業革命により隆盛となっていた綿工業製品等を大陸から閉め出すための大陸封鎖令に違反して、これら製品の密輸により莫大な利益を挙げていたとされるが、この裁定取引に関して、野口悠紀雄氏は、「市場間の価格差を埋めるもので、必ず、利益を挙げられる。非生産的経済活動との批判もあるが、市場の不完全性を克服し、大陸の人々から感謝された」と、論じられている。(週間新潮2017年6月1日号)
この様に、法的に違法な裁定行為も、経済的効用を最大化させ、一物一価を実現させ、資源活用の効率化に寄与し得ると言う論点に際して、倫理的論点=大陸封鎖令に対するロスチャイルドの違法性に絡む問題は格別としても、ジャーディン・マセソンのアヘン密輸乃至現代のコカイン密輸等にかかる裁定行為に対しては論者はどう評価するのであろうか、と言う点は別途、筆者が?と感じたのは、「必ず、利益を挙げられる」という点である。
筆者が、実際行った裁定行為には、スプレッド投資にかかる物があった。 これは、例えば、A社発行の債券とB社発行の債券の間に、”通常”(利回りで)50bpの差があるとされる場合に、それが、例えば80bpに開いている場合には、A社の債券価格>B社の債券価格とすれば、相対的にB社債券が売られ過ぎか、A社の債券か価格が買われ過ぎであるから、A社の債券売り・B社債券買いのポジションを作れば、スプレッドが”通常”の50bpに戻ると利益が出る。 反対に、スプレッドが30bpに縮まっている場合には、同上理屈から、A社債券買い・B社債券売りのポジションを作れば、”通常”スプレッドに戻る過程で利益が出る。
このスプレッド取引が、何故、裁定取引と言われるかは、一般の金利上下に左右されず、”通常”スプレッドの乖離だけに着目してポジションを作るからである。即ち、金利上昇したとしても、スプレッドが開いた場合・縮んだ場合、何れの場合でも、売りポジションを持っており、買いポジションの損は、売りポジションの益で相殺されるようになっているからである。
従って、このスプレッド取引で一般金利の上昇・下降にかかわらず利益が出る、と”通常”は思われるが、”必ず”出る、とは、言い難い。何故なら、この拡大・縮小したスプレッドが、”必ず”元の”通常”スプレッドに戻る保証は無いからである。 実際、筆者が行ったスプレッド取引でも中々スプレッドが戻らず、ポジション解消に苦労した覚えがある。
また、つい先日、クリント・イーストウッド主演の90歳のコカインの運び屋の映画を見たが、捕まらない内は空間的裁定行為により高い報酬を得られるが、捕まってしまえば刑務所送りとなってしまう。法的(違法)裁定行為は、利益を得やすいが、”必ず”儲かるとは限らない。 ナポレオンも林則徐も敗れてしまった為、ロスチャイルドもジャーデイン・マセソン*も、現在でも世界に冠たる財閥・コングロマリットとして隆盛を誇っているが、その利益の出自・源泉から言えば、世界の平和・貧困解決の為には、一般の会社より、より重い社会の公器としての、責務が求められるのではないか。
更に言えば、往事のシルクロード交易も、西遊記や東方見聞録を持ち出すまでもなく、それは苦難に満ち、リスク*に有り触れた”裁定行為”であったろうし、中世のベネチアの東方貿易も、為に、リスク分散としてのパートナーシップ;『コレガンツァ(Collettiva su Garanzia:連帯保証)』、現代に置き換えるなら「疑似株式会社」;を生み出し、そのリターンの計測のために、(1回)清算型の静態的複式簿記を発展させている。
*ちなみに、このリスクという言葉も、イタリア語で船乗りを意味するリズカーレ(risicare)が その語源だとされているそうである。
また、ロスチャイルドは、早馬でウェリントン公爵勝利の情報をいち早く手にしたというが、その為にはそれ相応の”資本”がかかっていたであろうし、HFTやHST取引にも相当な人力・資力が必要となるであろう。 即ち、裁定行為を行うための裁定機会を見いだすには頭脳的・身体的・技術的また、資金的等様々なコストがかかりフリーではない。言葉を変えれば、裁定機会を見いだせるか否かには、リスクがあるという事である。(それで、先述、裁定機会が見いだしやすいインサイダーの立場に身を置く!と言うことになる)
この様に見てくれば、裁定行為は、その性質乃至定義上利益が出る行為であるが、”必ず”出る!と言う物ではなく、それには物理的経済的政治的な様々なリスクが伴っていることが分かる。
*ジャーデイン・マセソンと並び称される香港の英系財閥であるスワイアーパシフィックは、香港のフラッグキャリアーであるキャセイ航空の最大株主であるが、現下の香港の自由化デモ・”新”雨傘運動に従業員が参加したとして、中国”大陸”政府から警告を受け、CEOが辞任、また、これら英系財閥の”機関銀行”として発足発展した欧州最大の銀行であるHSBC(香港上海銀行)は、件のファーウェイ(華為技術)副社長の逮捕にかかる情報を提供したとして中国”大陸”政府から警告を受け、同じくCEO等が辞任・処分されたと日経8月27日記事が報じている。租借100年ー返還20年を経て、"裁定行為”の政治的リスクが顕現してきている、と筆者には思われる。
そこで株・証券・為替等の取引所取引に於ける売買の当事者・Principalのリスク削減策として、本題のHFT・HST取引が、コンピュター・AIの進化・深化に伴って隆盛を極める様になって行った思われる。
では、何故HFT・HSTになるのか
これには、BoxTradeと言われる売買手法が関わっているものと考える。
まず、売買対象物の価格が、買いポジションを前提として、@100から@150にある期間で上昇すれば、当然、50の利益を得る。 但し、この投資家が、現実利益50を得るためには、この買いポジションを清算・売却しなければならない。そのまま、ポジションを保持すれば、その50は単なる含み益で有り、期間経過後は、また、価格が下がり、評価益は減少するかも知れない。
と言うことは、価格が@100から@150迄、一直線に上昇する場合は別途、その間に上下している場合には、例えば、@100で作った買いポジションを@130で一旦清算、うまい具合に、それから@110に下がった際に、また、買いポジションを作り、今度は@150で売り抜けられたとすれば、合計の利益は20と40で60となり、単純に、買い持ちして売り抜けた場合より、利益が大きい事になる。

これが、BoxTradeであり、上図左端の図のように、買いポジションを、価格がBox圏の動きをするなと思えば、一旦①で売却、Box圏の下値に近づいたと判断したときに買い戻し、再び、Box内の上値に近づいたと思われる②で売却、再度、下値圏で買い戻し、③では、依然、Box圏を出ないと判断すれば、売却するが、そろそろBox圏の動きから、上放れすると思えば、そのまま保有し続ける、という売買Technicである。
また、趨勢で見れば上昇トレンドにあるとしても、時間を細分して見れば、真ん中の図の様に、トレンド線を挟んで、価格は、上下降を繰り返すものであり、更に、その”波長”の一部を見れば、右端の図で示すように、左端の図と同じく、Box内の動きを示すものである。
所で、下の図を見て頂きたい。

一見、先の図の真ん中の図の青線が上の図の右上がり直線(dx=adt)であり、同じく赤の波線の上に左端の黒線乃至右端の緑線を重ねたものが同じくギザギザの波線(dx=adt+bdz)になっている、と思われないであろうか
実はこの図は、表題にもあるとおり金融工学の名教科書とされるJohnHullのOptions,Futures,&OtherDerivativesから取ったものであり、下のギザギザ線dzがウイナー過程、物理学的にはブラウン運動を表し、右上がり直線adtがドリフト、即ち、時間的(価格)傾向を示し、両線の合成adt+bdzが一般的ウイナー過程、即ち、Option/Derivatives理論・分析の基礎となる価格理論を表している.
この理論自体については、別途述べたいと思っているが、dz、ブラウン運動自体は、本来、物理学において原子の運動について記述する為のものであり、それはバラバラ・各独立した原子が微少時間Δtにおいてどのような動きをするかを示すものである。
翻って、現実の日経ダウ乃至平均の過去の推移を見れば、大局的には、’89年末の約40千円から、’02年乃至’08年末の約8.5千円の”Box"内で動いており、ここ2年は20~23千円の”Box"内で動きであり、米中貿易”戦争”の真っ只中で、米国ダウが千$近い下落を示しても、20千円の下値は、相当、固い”岩盤”となっている様に見える。
しかし、かかる超長期乃至中長期的”Box"圏において、BoxTradeが行われる訳ではなくー中長期的経済動向・トレンドをみながら行う取引はSinarioTradeと言うー短期的にこのBox圏が”安定”している、即ち、sinario的要因の影響がない、トレンドが一定、統計学的・物理学的には価格に関する確率要因が独立的、と思われる場合に行われる。
このようなBoxTradeの典型が、筆者が第一線を退いた20年位前に盛んに喧伝されたデイ・トレイドであり、その後も現在に至るまで、ネット証券が宣伝勧誘するFX取引等である。 これらのデイトレイドは、ゴールデンクロス・長期平均指数からの乖離率等チャート分析に基づくtechnical取引と思われ、この様なチャートに基づくBoxTradeは、個人レベルでも、分単位程度迄であれば可能と思われる。
しかし、ウイナー過程乃至ブラウン運動を前提とした価格理論*をベースとした取引は、その定義上Δtを単位とする取引であり、しかも、Δtであればあるほど、Box圏の安定・trend変化、drift変化・確立要因の独立性が保たれる、即ち、”利益を挙げる”機会が高まる事から、到底、”人力”で手に負える筈もなく、従って、冒頭に述べた如く、㍉秒単位から㌨秒単位まで、コンピューター・AIの進化に伴い進展してきている、と考えられるのである。
*ところで、先のHullの教科書では、technical取引は過去の価格推移に基づいて判断を下しているので、平均以上のパフォーマンスを挙げることに否定的決論が、ウイナー過程に基づく価格理論からは言いうるとしている。
この点、筆者も、technical分析は、過去の取引にはピッタリ符合するが、今からの取引には役立たない!と、現役時代にはよく議論していたが、chartistからの、反論は、それは”ダマシ”にあっている・見抜けないからだと言うものであった。
思えば、’87年のブラックマンデイと称される大暴落は、初期のコンピューターを用いたシステム・トレイドと呼ばれる時代において、所謂チャート的売りサインで一斉に売りが集中したためであると言われてきた。 しかし、爾来、この相場の暴落・暴騰は,リーマン・ショックの如きシナリオ的暴落を含みながらも、数多く繰り広げられており、現下のHFT・HST時代においても、米中関税競争を巡り、つい直近ダウが600~800$暴落するかと思えば、日経平均も3~4百円下げる事態となっている。 即ち、㌨秒単位で取引が繰り返される空間において、一旦、Box圏が下放れ乃至上放れとAIが判断すれば、1秒で何十億件という取引が、一斉に売り乃至買いに向かうわけで有り、価格変化が、大幅にならざるを得ない訳である。
従って、相場は、チャート的technical分析時代においては、陰の極とか陽の極とか、下ひげとか上ひげとか、”ノンビリ”とした変化を示したものが、現在では、”一瞬”にして変化し、その後は”狭い”Box圏で推移するが、また、何等かの”シナリオ”的要因で”一瞬”で変化すると言って差し支えない・そのように先のウイナー過程を前提とした価格理論・その理論に基づくであろうHFT・HST取引では、ならざるを得ないものと考える。
以上、やや長くなったが、何故、HFT・HST等取引が高速化してきているかという事に対する私の理解(誤っている部分も多々あろうかと思い、ご指摘・ご教授賜えれば幸甚)であるが、現状、この高速化については、限度が生じてきているようである。
それは、日経’19年8月6日記事で、シカゴ・オプション取引所が4㍉秒・インターコンチネンタル取引所が3㍉秒・ロンドン金属取引所が6~8㍉秒の、「取引所に注文が到達しても実行を遅らせる」スピードバンプを導入する乃至その方針を決定した、と報じている。
更に、同記事は
1,このスピードバンプは、米取引所IEX(不明にしてよく知らないが、Wikipediaによれば、’16年9月に証券取引所として発足したようである)が、350㍃秒遅らせることを最初に導入したとの事であり、投資家の85%が導入支持を表明していることから、他の取引所による導入の後押しとなっている。
2,このスピードバンプが導入される背景として、HFT/HSTが株価情報等をいち早く取得し、他の長期投資家・個人投資家に先駆けて取引する不平等感を解消し、価格を見直す時間を与えよりよい価格(即ち公正価格の意味と考えるが?)を提示しうる様にする為である。
3,HFT/HST業者は、売買注文を常に出す「メーカー型」とメーカー型に注文をぶつけて約定する「テーカー型」があるが、このスピードバンプは、テーカー型にとって、不利になるとみられ、現に、スピードバンプは、テーカー型の注文すべてが対象とされている。
と解説している。
一方、同じ日経3月27日記事では、シテイーグループの英国法人が、大阪取引所日本国債先物夜間取引で、「見せ玉」と呼ぶ(古典的?)手口で、AI取引等を巻き込みながら相場つり上げを行ったとして、1億円の課徴金を課された、と報じている。また、日本以外でも、米商品先物取引委員会か相場操縦を繰り返したとして同グループに、2500万$の制裁金を科した、としている。
上述の如く、HFT/HST取引は、情報的裁定取引というのが基本的性質で有り、それが時代の進展ーコンピューターの発達・情報メデイア、伝達伝播の進化・金融工学の進歩ーに合せて、登場・成長してきたと言うことだと考えるが、その市場シェアーが、先の通り、6~7割にも達するとすれば、それは、情報的裁定を通り越し”情報独占・寡占”ともなり、AI/コンピュウターに投資する資金力、技術力を有さない他の(個人)投資家の不平等感を招来し、中長期的投資家は言わずもがな微少時間(取引)が極短期的投資感~先のよりよい価格~をも駆逐する様になってしまっている、と言うことなのであろう。
かといって、同じHFT/HST業者間の競争・メーカー型とテーカー型との駆け引き、また、微少時間であればあるほど相場変動・そこから得られる利益は小さいはずであるし、取引頻度による利益の確保とはいっても投下された資本・資金に見合うか、更には、高度化・微少時間化された裁定行為と言っても裁定行為自体が”必ず”儲かる、という取引ではない、事から、シテイーグループに見られる如く、勢い、違法的裁定行為に走る、と言うことになるのであろう。
今、米中の21世紀以降の覇権を賭けた”冷戦”が繰り広げられているが、その核心に5Gを巡る主導権争いがあるようである。
5G時代においては、技術的には今のHFT/HST取引を遙かにしのぐ金融工学的・AI的手法が誕生・登場してくるのであろうが、”裁定行為/裁定取引”である以上、絶対的に、現在のHFT/HSTにみられるような、”何等”かのリスクは伴う、と言っても過言ではないものと思う。
追記、HFT/HST取引については、なお、実務取り扱い上、疑問な点があり、これらについては、また、別途、書いて見たいと思う。
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