添付投書

前略

小生、70歳の年金生活者です。
今回のコロナウイルス問題に付き、不可解なのは、貴番組での岡田先生や大谷先生が訴えられている検査の重要性に対する議論です。

別番組で感染研OBの岡部川崎市健康安全研究所所長が述べられていた、感染者の8割は軽症ですみ、後2割の重症者、特に高齢者の為に十分な医療体制を確保しておく必要がある、との見解は、我々、高齢者にとって大変有難い事ですが、その事と、検査自体を抑制的に運用する事とは直接的関連性を有するとは思えません。
これに対しては、検査自体の精度から、所謂偽陽性者が病床を占拠して、医療崩壊に結び付く可能性を指摘し、検査は、慎重に行う必要性を述べられていたと思います。

一方、感染研尾見副理事長が、4日程度は、咳等症状があっても、自宅で様子見をする様にとの診断指針は、検査体制のcapacityからの逆算である旨、国会審議において答弁され、岡田先生も、良心を持って答弁されたと評価されていたと思います。

従って、現状迄検査が抑制的に行われていた、いる理由は、よく分からないのですが、指摘されている検査の精度に関する報道が、私が見ていないだけの事かも知れませんが、一切無いことです。

もし、検査の精度が低いために、やっても余り意味が無く、却って、医療体制確保に害がある、と言うのであれば、それを、もっと分かりやすいように説明していく義務が国・厚労省にはあるのではと思います。

そこで、今までは全く知りませんでしたが、検査について、報道で述べられていた事やネットやらで調べて見ました。

そこで、プライマーとか、検査自体に関わる生化学的・医学的知見は、門外漢には分かりませんが、検査の結果・統計は以下の表に表せる様です。


検査試薬は、母集団に投与されることにより、陽性者を判別する事になりますが、表の様に、感染していても陰性と判定される偽陰性者、非感染であっても感染者と判定される偽陽性者を含む為、前者、即ち陽性者÷感染者=感度、後者、即ち陰性者÷非感染者=特異度と、称される数値が重要になる、との事です。

そして、感度1・特異度1であれば、検査陽性者=感染者となるが、精度が100%では、無いために、偽陽性・陰性者が出てくる、と言うことです。

で、問題は、現状の検査議論の中で、この検査試薬の感度・特異度が全く公表されていない・議論されていない中で、拡充検査が必要だ・却ってイタリアの様に有害だ、と話しが空中を飛び交っていることです。

ネットで見る限りにおいては、感染研のキットであれ、中国がみるに見かねて日本に寄贈したと言われるロシュ・ダイアグノスティックスのものにしろ、分りません。

素人・門外漢には、不必要な情報だという事かも知れませんが、これらがないと本来の検査拡充必要論・現行体制以上の不用論の本質が見えてこないと思います。

それで、ネットを見てみると、
http://spell.umin.jp/thespellblog/?p=235
2020年3月2日 / 最終更新日 : 2020年3月3日 enango EBM
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のPCR検査の意義をEBM的思考で考える
病院総合診療医 & EBMer/EBM educator  南郷 栄秀

と言う方の、ブログがあり、そこに、以下の様な表がありました。


『従って、きちんとした専門家は,結果が当てにならないので,検査をするのではなく,新型コロナウイルスに感染しているかもしれないことを前提に,具合が悪ければ仕事を休んだり,外を出歩かないようにするよう言っているのだ. 検査を受けに病院に行くくらいならば,状態がひどくない限り家に閉じこもっていたほうがいい.また,本当は新型コロナウイルスに感染していないのに,病院に行くことで,かえって病気をもらう可能性だってある. 感染していた場合には 検査をすることで院内に撒き散らすことにもなりかねない.
私はかかっていないから大丈夫と思っている人が,実は感染していて自覚なく周囲に撒き散らしながら歩いているのは非常にまずい.国民の一人ひとりが感染拡大を防ぐべき行動する必要がある.誰か任せでは感染の流行は収束しないのだ.』


 と述べられており、“無闇な”検査拡充論の骨子は、ここに言い尽くされている、と思うのだが、この方も対ロナウイルス検査試薬の感度及び特異度に関するデーターはなく、表のデーターはSARSの際の検査試薬の巷間言われているデーターを使用しているとの事である。
それで、そこはそうとして、問題と思うのは、「事前確率」と言う事である。
この事前確率5%と言うのは、韓国の今回の65千人のデーターから使用している様なのだが、正しく、感染者数6百万人と言う数字を割出す・推計する為に、検査は必要なのであり、大邱や大阪のライヴハウスであった様なクラスター・集団感染の数字を母集団に含む確率で感染者数を推計しては、本末転倒の話しになると思われる。

そこで、以下の表の様に、

 

 μを感度、qを特異度とすれば、先の表は、上記の様に表せることとなり、事前に判明していることは、μ・q・Zであり、検査によって、TPが明らかとなり、これにより、実態感染者Xが判明し、偽陰性・陽性者も判明してくると言うことだと考えられ、X=事前確率*母集団では、明らかに、検査は無意味であり、重傷発症者が顕在してから治療すれば良い、という事になる。
母集団毎の実態感染者数を推計することに検査の意義があるはずだ。
しかも、このXを求めるのは、簡単な筈だ。
μX+(1-q)*(Z-X)=TPだから、
X={TP-(1-q)*Z}/{μ-(1-q)}
または、
(1-μ)*X+q*(Z-X)=Z-TPだから、同じく
X={TP-(1-q)*Z}/{μ-(1-q)}
となる。

そこで、件のクルーズ船の、総乗員4000人、検査陽性者数700人として計算すると、以下の表になる。

 

偽陽性者は30人なので、陽性的中率は、95.7%(670/700)、(事後)感染者率は、23.9%(957/4000)となる。

また、感度と特異度を色々変化させてみると以下の様になる。

 

これで見れば当然、感度・特異度が上がれば、偽陰性・偽陽性者が減ることになるが、元々感染者の方が非感染者より少ない筈であるから、特異度の正確性が上がり偽陽性者の数の減る方が、感度が上がり偽陰性者の数が減る方より大きい筈である。
従って、感度0.7で特異度0.99から、同じ特異度0.99で感度が0.9に上がる時の、偽陰性者が287名から74名に減るときの感度1%当たりの偽陰性者の減少率3.7%に対し、感度0.7特異度0.9と比較した感度0.7・特異度0.99の時の擬陽性者減少数320名(350-30)の特異度1%当たりの減少率10.1%を見れば、特異度の精度が、同じ“偽”者を見分けるには感度より3倍重要となる計算になる。

こう見れば、今の検査試薬の特異度の精度が低いため、検査すれば偽陽性者の数が多く、病床不足になるから、ギリギリの症状で無い限り検査をしない、と言うことは頷ける側面もあることとなり、一方、感度が低いために、検査しても、ブログにある通り、偽陽性者が巷間に野放しになるし、8割は軽症で済むため、検査はしない、と言う事にもなり得る。

従って、検索拡充にしろ検査現状維持にしろ、“科学的”または“Evidence”に基づく議論とする為には、検査キットの感度及び特異度が現状如何ほどのものかを明確にしない限り、正当な議論とはなり得ないのではないかと考えられる。

無論、識者はこれらを踏まえて議論されているのかも知れないが、一視聴者としては、甚だ不明朗な議論と見做さざるを得ない。
また、何等かの理由で、感度・特異度の公表が為され得ず、識者としてもその事を前提として議論されているのであれば、やはり、斯く斯く然々の理由で感度・特異度は公表されないので、その事を前提に種々提言している等の説明が必要と考える。

以上、誤謬に満ちた計算・推測であれば大変申し訳ないことであり、お詫び申上げる事を前提に、よろしく精査・ご検討頂き、番組作成に反映して頂ければと思い、投書、送付いたします。

草々
令和2年3月13日
練馬区中村1-7-2
吉岡俊郎
03-5241-4689
090-5808-3546


追記
当初、検査を拒否した武漢からの帰国者、陽性だから他者を感染させるとして外出した蒲郡の人、検査を受けさせてくれないと暴れた人等、論外な人もいるから、難しい問題を、なおさらややこしくしていることもあろうかと思うが、やはり、検査は広範囲にやるべきだと考える。
先の表で、感度・特異度がそのままだとしたら、偽陰性の人は、287人いるのだから、検査は一応陰性だけど、8.7%(287/3300)の確立で、陽性かもしれないので、出来るだけ外出、他者との接触を控えるようにと、科学的に説明・要請できるようになるわけだし、特に若い方が仕事を休まざるを得なくなるときには、補償も含めた対応の根拠ともなるかと考えるからである。
また、偽陽性の方は、30人しかいない訳であるから、670人の陽性者が病床を占める割合からすれば、4.5%に過ぎず、直ちに、医療崩壊を招くと言うことにはならないはずだし、感染はしているかもしれぬが、軽症であれば、特に若い方は自宅療養に取敢えず努めて頂くという要請の根拠ともなるし、また、出来るだけ検査数を増やせば、それこそ韓国のように全体感染率の把握に繋がるし、更に、2回目の対策で出たような病床数の確保をどの位見積もらなければいけないかの根拠のデーターともなり得るものだと考えるからである。

 

なお、国立感染症研究所については、以下の記事がある。