コロナ経済対策

前略
昨晩のインターパーク倉持先生のお話の通り、今からオーバーシュートが起こりうるとすれば、それに対応できる体制を整備することが肝要であり、その、オーバーシュートの懸念は、現場で奮闘されている倉持先生の方が、厚労省等より強いとの感触がしました。
これに関し気になるのが、物流とウイグル人の教育施設の件です。
後者は、全く、コロナ対策とは関係無いように思えますが、この世界的コロナ戦争が終った後に、21世紀のアウシュビッツになっていた等判明したら、これは人類としての敗北でしょうし、今、中国内でのコロナは収束しつつあるかの状況の中で、これまで、新疆での感染者数や死亡者等の情報は、目にした事が無いように思います。
ネットでも、1,2、施設内の状況を危惧するものは見られるものの、詳細は不明のようです。
実は、他局に橋本厚労副大臣が出演され、クルーズ船対応に当たっては、大変苦労された様ですが、元々人道支援の観点から入港に応じたものの、その政治的判断と感染病乃至疫学的対策との平仄にやや齟齬があり、その間隙を、逆に非人道的と一部に非難された、との事と理解しました。
貴番組でも報道されたようにイタリアで何故感染爆発したのかは、件の中国の一路一体の欧州での終点に当たっており、中国との往来により持ち込まれた事であることは明白であり、この点、中国から医師団派遣の打診があったと云うことですが、イタリアが受け入れたどうかは不分明です。
一方、WHO事務局長は、兼ねて、中国に対する対応からか避難のあるところですが、今、ようやくアフリカでも感染が広がり始めている様です。方や、中国は、収束方向になっているのは明かの様であり、中国に医者数は265万人・日本は32万人と人口差を反映圧倒的差があり、これから、本来の人道的立場から貧困アフリカ諸国への医療支援を行う事は無論の事ながら、その覇権的意識からこれを行い、世界の政治的立場の強化を図ることは論外だと思います。
そのために、このウイグル人教育施設におけるコロナ感染状況を世界に発信する責務を中国は負っているものと考え、情報入手は困難だとは思いますが、ぜひ、この状況にかかる番組を放送して頂ければと思います。

次に、物流の件は、昨日も倉持先生が自作の防護服で対応されているとの話しが有りましたように、医療関係者への重点的マスク・防護服等の配布の重要性は語られていると思いますが、物流担当者へのこれらの物資の配布の重要性が議論されていないように感じます。
オーバーシュートからロックダウンに至れば、その封鎖区域内に対する物流の維持は、コロナ封印・病気治癒同等の重要事になると思います。
この点では、中国も武漢においては格別問題を生じさせなかった様ですし、クルーズ船の場合も、当初はともかく、日本食等の手配もあり、食事等待遇そのももには不満はなく、物流は順調になされた様です。
しかし、この騒ぎ以前から、物流関係者の人手不足は問題となっていた訳であり、和歌山の最初の方の感染につき、関東方面からの長距離トラックの方がその源とであるかもとの報道も一部あった様な気がします。
トイレットペーパーの様に、物資資材は有ったとしても、直接的に人手に渡らなければ無用の長物となります。
物流~上流から末端迄~に携わっている方の数と健康を確保しておくことは非常に重要と思います。不幸中の幸いと言うか、観光バスの運転手さん等が、多数レイオフされておられるようですから、これらの方の助力をお願いする事も一案かと思われます。

そして、コロナウイルスに対する諸対策・景気対策には、当然、資金を要する訳であり、今、1人2万円給付とか、消費税0とか、色々な施策が取りざさされ、5兆円とか10兆円とかの緊急予算になるのではとか噂され、米国の100兆円に比べ、如何にも、危機意識が足らず、1人10万円とかにすれば、最低でも、その施策は、30兆円位の規模でなければ効果がない等の議論が出ていると思います。
麻生大臣は、1月28日の衆院予算委員会の前原前外相の、首相施政方針演説での“公債発行の8年連続での減額”は、実績と合致していないとの追求に対し「野党を向いて仕事していない。市場を相手にしている」と実質上、国債発行減額は、プロパガンダであることを認める発言をし、前原氏も、その大胆さに感嘆をしていた所の中継を見ておりました。
物流と言えば、世界の工場の中国の生産が低減し、国際的サプライチェーンの機能不全により、益々、世界経済日本経済が打撃を蒙る様になって行く事になり、ある番組では、今年の中国GDPは当初予想の5~6%から1%程度になる、との見立てがありました。
今、米・中・日のGDPが20・13・5兆$とすれば、その5%*1は1・0.65・0.25兆$となり、108円/$とすれば、108・70・27兆円となり、アメリカは合計100兆円と言われていますから、自国の経済の落ち込みを中国並と見立てていることにもなると思います。
未だ、コロナ封じ込めが喫緊の課題なのか、景気面の対応は打ち出されていない様ですが、中国は、あのリーマンショックの後、世界の経済の機関車たるべく、4兆元(当時のレートで約57兆円)の景気対策を行い、「世界を救った」とされていますが、今回の落ち込み予想が正鵠を獲ていれば、リーマン並みの施策を打ち出すことになると思われます。
従って、10兆円クラスでは、日本も不十分と言われていると思いますが、財政再建の為、市場へのプロパガンダも厚顔に行い、景気落ち込み懸念にも頬被りして消費税アップをしている状況において、果たして、危機に対応できる充分な施策が案出できるのか疑問です。

今までの、所得税申告の1ヶ月延期や、固定資産税等の払い込み延長等、それはそれとしてミクロ的に評価出来る事例もあると思われますが、麻生大臣は、“呪われたオリンピック”と倣う事も悪いとは言いませんが、同じ倣うならば、昭和の蔵相高橋是清に倣えば如何かと思われます。
特に中小企業対策として、5000億円の無利子無担保融資は、有効に機能している様ですが、やはり、借入れではと、二の足を踏む方も多いようだとの報道もあります。
そこで、今は、昔と違い手形も電子手形です。
今後倒産等増大の懸念が出れば、30~60日の金融モラトリアムの発動を今から準備しておくべき、準備しておいて発動の必要がなくなれば幸いだと思う位の対策を用意しておくべきだと思います。
この点、関東大震災時とは違い、遙かに、上述、国際間決済が多いはずであり、この点、G7会議等なりで、麻生大臣自ら、國際間金融モラトリアムを提議されては如何かとも思います。
特に、先のアフリカ諸国やアジアの開発途上国で、経済的困難が増してきたら、これらの国際的金融協調は不可欠なものになってくると思います。
後述、世界恐慌時においては、これに対する大国の協調が、植民地を媒介とする覇権競争、また、金本位制の桎梏から機能せず、結局、世界のブロック化を招き、大戦へと流れ込んでいった歴史があります。
当時と、全く、違う世界に見えて、今の社会・政治経済状況は、相似形を為している感も、麻生大臣のみならず、すると思います。

また、やはり、日本が経済危機対応をする場合、一番、問題となるのはその財源であろうと思います。
木曜日の貴番組で森永先生が、財源は国債発行で問題はない旨発言されており、事実、国内預貯金の残高内に国債発行残高が納まっていれば、問題はないと思われますが、国債は市中=銀行に向かって発行され、それを日銀が異次元の金融緩和の下に、買取り、実質的に国債の日銀引受となっている。―この迂回ルートを経るから、今の所、財務省が懸念する財政破綻の生じていないとも思いますが、逆に、その異次元金融緩和が目途とするマネーサプライ増加から景気上昇という好循環につながらず、麻生大臣の言う単なる日銀当座預金増加“ブタ積み”になっています。
今回も、株価下落に応じて、ETFの買い増し等の対策を行っても、含み損が増加し、日銀債務超過懸念も一部報道される始末です。
実は、今回アメリカが100兆円の半分の50兆円を国民に直接給付するという案も、政府や森永先生・桝添前都知事が提唱されている2~30万円を国民に配るという案も、この異次元金融緩和の際に議論されていたフリードマンが最初にアイデアを出したと言うヘリコプターマネーです。
日銀の当座預金を増やしても、信用創造機能・貸出連鎖が継続しないと、マネーサプライは増えません。しかし、市中に、ヘリコプターからお金を配れば、確実にマネーサプライは増えると言う論法です。
休業により所得を失った方は物を買えません→無理をして操業していた会社は潰れます→失業が増加します→益々需要が減る・景気が加速化して不況となります。
ヘリコプターマネーを、この所得が減少し困窮している方に配布すれは、この逆になることは容易に理解できると思います。

で、何故、採用されなかったか
劇薬だからだと思います。

事実、政府の4100円乃至84300円、2万円給付等の案は、その規模が大型となり、それを、国債発行によって賄えば、財政破綻、ハイパーインフレとなる事を財務省が恐れているからです。(~森永先生は、その頃には、景気が回復しているから税収増により国債償還が可能となる・インフレ症状がでたら、その時に増税路線に転換すればよい、とのお考えかと思います。⇒同席の大蔵出身山本前大臣も苦笑されていたと思います。)

所で、この前後、高橋洋一氏らが、政府紙幣発行乃至政府と日銀が一体となった総合政府論を展開されていたと思います。
政府は補助貨幣たる硬貨しか現在は発行していませんが、紙幣、言わば、軍票とか藩札に当たる物を発行する権利は持っており、日銀だけが法定通貨たる紙幣を発行する権利を持つ物ではない、とされていたと思います。
政府の財政放漫を律するために、貨幣価値を守るために、中央銀行が成立して来ている歴史的重みがあります。
しかし、今やリーマンショック以上の、世界的経済混乱が生じ始めている時期に、既に、国債発行による財政政策の手詰まり、金利0・異次元緩和を長年継続してやって来ているにも関わらず一向に景気上昇に向かって来ていない金融政策の手詰まり、という現状に対し、もはや、超大型の景気対策を行う手段は、この政府紙幣発行しかないのでないかと思われます。
即ち、国民一人一人に対し、現在の困窮事態を直接的に解消するためにヘリコプターマネーを投下する、そのために、政府が日銀向けに政府紙幣*2を印刷して渡し、見返りに、日銀が日銀券を印刷して政府に渡し、政府は、それを財源として、個人に交付する(無論、企業向けにも、色々な支援策を行う)。
経済的緊急事態が改善し始めたら、政府は、増加した税収乃至増税により、暫時、政府紙幣を買い戻す即ち日銀紙幣を回収する、というシナリオです。

これが、今、一部報道されている特別国債と何が違うかと言えば、
国債ではない。検討されているという特別国債と言えば、何か現状の国債とは別物との感触を与えたつもりになるかもしれないが、元々、戦後初めて国債が発行された国債は建設国債であった。その後、赤字国債が発行される様になったが、今や、その区別は注目されているであろうか
特別国債も、何れ、そうなり、財政債権の旗印は、益々遠のく
更に、国債即ち債券ではないから、実質金利0環境下と言え、初めから、金利が付かない、また、償還期限がないので借換二―ズもない。
と、言う大きな違いがある。
今回の景気対策が、充分に実効性のある物とするためには、大型でなければ成らず、財政金融政策が尾羽打ち枯らした中での財源捻出の為の窮余の一策であり、しかも、劇薬であるから明確に他の財源策と区別されなければならないところ、上述の如き政府紙幣であれば、判然として、しかも、その回収策も、発行時に明確に定めておけば、高橋是清が直面した困難さも回避することが出来る、と思われるのです。
この様な、一見途方もない、と言う事もないのですが、極端な案を出すかと云えば、やはり、危機管理は、最悪の最悪を想定して準備しておく、想定外の事態です、と言う事自体が、危機管理と矛盾する語彙だという事だと思うからです。
いま、世界各国が、入国制限をし、事実上、人の往来の観点からは、EU・中国・日本・米国と、並に、そのそれぞれに付帯していく国と、大きくブロック化されました。
貿易面では、件のフアウェイの5G問題の時から、テリトリー合戦・ブロック化の傾向が既に出ています。
第一次大戦次のスペイン風邪*3、麻生大臣も、きっと頭にあるかと思いますが、その後の、一連の景気循環の中で、最終的には、NYダウの急落をシグナルとする世界恐慌・金本位性崩壊・ABCD包囲陣・第二次大戦と続く一連の事態に、不幸にも、日本は見舞われました。
コロナ戦争自体は、ある意味早期に終息したとしても、経済の混乱は、今から半年~1年の各国の対応如何でどのようになるかも知れません。
当初は、あのBlack Thursdayが、当時のアーヴィング・フィッツーや高橋是清・井上準之助を持ってしても、世界恐慌に連なるとは思われていなかった訳です。
無論、当時の環境とは全く違うわけですから、前述、G7等を通じた世界的金融危機対応やWHO等国際機関を通じたアフリカ諸国への医療援助を含めた数々の支援をして行き、世界恐慌を再来させないと言う決意で、各国が取り組んでいく事が肝要ではあるとは思いますが、往々、協調・協力が十分でない、大国の覇権意識が変に作用する等の事態に陥ると、正しく、世界の政治経済的分断・ブロック化*4につながる事がなくもない、という意識の下に、マクロから見つつ、ミクロの施策を講じて行くことが今の時点から必要・肝要なことと思い、長々と書き続けてしまいました。
幾分かでも参考にして頂ける所があり、有意義な番組をこれからも報道して頂ければ幸甚です。

草々

追記:2020年4月8日

*1;3月27日付日経、『日本経済研究センター中期経済予測』において、「新型コロナウイルスの影響・・・財政による下支えがなければ・・・日本の実質GDPは約4%と、世界金融恐慌が起きた08年度より深い落ち込みとなる」と、報じています。

*24月3日付サンケイ、『古典個展、加地大阪大名誉教授』は「<日の丸国債>を今回発行すれば、十分な(コロナ対策)財源を準備出来る。・・・日銀発行の一万円札に国旗・日の丸を刷る。・・・無利子にするが、通貨として使える上、その相続税は免除する。・・・30兆円くらいが政府に入るだろう」と、述べられています。

*3;3月30日付日経、『読むヒント』は「ワイマールの教訓とは」として「世界は前世紀前半に似てきた保護主義が広がり、貿易戦争が続く。・・・突然のコロナ危機は、大恐慌から戦争へと突き進んだ過去さえ思い起こさせる。・・・ドイツの危機感は強い」と、述べています。

*4;3月31日日経、『歴史学者ハラリ氏寄稿』として「人類はいま、世界的な危機に直面している。おそらくわたしたちの世代で最大の危機だ。・・・コロナの嵐(に対し)・・・(国内的には)全体主義的監視か・・・情報をキチンと提供した上で市民の積極的な協力(を得る)市民の権利(によって)か・・・(国際的には)自国を優先し各国との協力を拒む国家主義的孤立を歩むか、・・・世界規模の行動計画の策定・・・グローバルに結束するのか」と、コロナ危機終了後の世界の変容の方向性に付いての警告が発せられています。

単なる、スペイン風邪以来のパンデミック危機ではない・・・単なる大恐慌・リーマン以来の世界的経済危機ではない、・・・単なる1国家の危機ではない・・・世界の全ての国家の危機・・・人類の有り様を変化させる危機、それは、世界の政治経済社会が、ある変容を迫られていたその時期に、偶々、それがコロナという形で現われ、それにどう対応するかで、コロナ終息後の世界が一変してしまっているかも知れないという、深い洞察・歴史観に基づいた現前のコロナ対応を、少なくとも世界のリーダーの幾人かはやっている、と思う。

果たして、我が国のリーダー達にそのような歴史的認識・精神的バックボーンは垣間見られているのか

望むのが、所詮、高望みなのか・・・