現代ビジネス 200人モデル

衝撃予測!日本のコロナ感染「5月に150万人超え」「あと3年は続く」…
長期戦を覚悟したほうがいい
奥野 修司

プロフィール
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「200人の町」での広がりかた
4月19日の時点で全世界の新型コロナウイルスによる感染者は233万を超え、死者は16万人を超えとなった。日本も東京を中心に3月24日から急増し始め、23日に1057人だった感染者数が、4月19日には1万人を超えた。いったい、どこまで広がるのだろうか? どうすれば拡大を抑えることができるのだろうか。
それに、外出制限をしてどれほどの効果があるのか、いまひとつイメージできないでいた。そんなときに、私の友人が教えてくれたのがワシントン・ポスト紙のサイトだった。
(1)を見ていただきたい。ある未知のウイルスによる感染症が流行したと設定した。このウイルスは200人の町でどう広がるか。住民を無作為に配置して、その中の1人を感染者とする。時間の経過と共に感染者が爆発的に拡大し、やがて感染者が回復することで感染拡大が収まっていくというシミュレーションである。


図(1)このシミュレーション動画は、以下から閲覧できます。
www.washingtonpost.com/graphics/2020/world/corona-simulator/?fbclid=IwAR00p6G6O-2-3Skj886YofwYS7llJF1_fsh3_pF6HFJ_o9hxKDPr0JkiBp0 (ドットより、上のRecoverd96Healthy0Sick104に注意すると分りやすい。以下同;注 筆者))

ところどころで赤いドットが、瞬間的に複数の白いドットを赤く染めているところがあるが、これを密室の空間で感染が広がる集団感染と理解すればわかりやすい。もしこれが大都市で広がったら早々に医療システムが崩壊してるはずである。
では、これを人口の4分の3が他者との距離(社会的距離)を置くか、自身が行動を制限したとする。そして残りの4分の1がこれまで通りに移動したらどうなるか(2)。


図(2) 動画: www.washingtonpost.com/graphics/2020/world/corona-simulator/?fbclid=IwAR00p6G6O-2-3Skj886YofwYS7llJF1_fsh3_pF6HFJ_o9hxKDPr0JkiBp0
最初のシミュレーションでは早々に感染爆発が起きたが、今回では同じように感染が広がっても、なだらかなカーブで増加していく。感染が拡大するまでの時間を稼げるので、その間に医療体制を立て直せば持ちこたえることができる。
さらに、自由に行動する人口を4分の1(8人に2人)から、半分の8人に1人まで減らすと、傾斜はほとんどなくなり、感染者がそれほど増えないうちに終息していくことがわかる(3)。



図(3) 動画: www.washingtonpost.com/graphics/2020/world/corona-simulator/?fbclid=IwAR00p6G6O-2-3Skj886YofwYS7llJF1_fsh3_pF6HFJ_o9hxKDPr0JkiBp0

かなり単純化したシミュレーションだが、このウイルスは人と人が接触することで広がっていくことがはっきりした以上、1人の行動は自身だけでなく、遠く離れた未知の人を感染させ、あるいは命を救うことになることを示している。
感染すればすぐに症状が現れるSARSのようなウイルスなら、武漢でやったように感染者を囲い込めば感染を抑え込める。しかしこのウイルスは、感染しても無症状の人が一定程度いるために、一人一人の行動を制限することでしか感染拡大を防ぐことができないということである。
それがよく分かるのが下のグラフ(4)のように、アメリカのカリフォルニア州とニューヨーク州の違いではないだろうか。
カリフォルニア州は住民の移動制限をしたのは3月19日(木)。ニューヨーク州は3月22日(日)だ。



図(4) 動画:https://www.mercurynews.com/2020/04/08/how-california-has-contained-coronavirus-and-new-york-has-not/
わずかな違いだが、カリフォルニア州が初期の段階で行動を制限することですぐさま前ページの(2)へ移行したのに対し、ニューヨーク州は金曜日から土曜日にかけて感染が広がってから移動制限をしたために、感染者数が増加して医療体制が持ちこたえられなくなったと考えられる。
これはニューヨーク州とカリフォルニア州の比較だけでなく、下の図(5)のように他の州でもいえるようだ。要するに、流行の初期の段階で早めに移動を制限をすることで、シミュレーションの(2)から(3)に移行すれば、感染による死亡率が低下するということだろう。


4月末には5万人が感染の可能性
では、日本はどうだったのか。多くの人は、日本の医療体制は先進国の中でも充実していると思っているが、ベッド数は多いがICU病床数や人工呼吸器などは貧弱だ。だから、PCR検査が少なくして、医療体制が崩壊しないように感染者数を抑えるのは仕方がなかった。

その間に感染爆発を想定して準備しておくべきだったのに、感染病棟も準備しないうちに慌てて「緊急事態宣言」が出されている。
さらに、無症状でも感染させる可能性があるなど、これまでにないウイルスが広がっているのに、いまだにPCR検査が少ないのは理解できない。おそらく準備してこなかったのだろう。
では、この新型コロナウイルスの拡大はいつまで続くのだろうか。いつになったら終息していくのだろうか。
東京大学名誉教授の黒木登志夫さんが、東京都の感染者の倍加時間(Doubling Time=倍増するのに要する日数)を計算すると、4月10日の時点で5・32日だった。これを5日として計算すると、4月末には「約25,000人の感染者数が出ると予想されます。恐ろしい数です」と書いている(https://www.covid19-yamanaka.com/cont2/main.html)。
ちなみに、4月10日から13日の国内平均の倍加時間は6.3~6.9日で、仮に6日とすれば、5月末の時点で感染者数は150万人を越える(倍加時間7日なら79万人と大幅に減る)。死者は何人になるのだろう。
日本はヨーロッパのようにロックダウンはしウイルスによる感染拡大は指数関数的に増えていくが、無制限に広がる訳ではない。高齢者や基礎疾患を抱えて感染に弱い人が淘汰されていくうちに、多くの人に抗体ができるとウイルスの感染拡大は止まる。
感染者数のグラフ(6)を見ていただきたい。



図(5) 各地域の感染者数の増減推移は以下から閲覧できます https://ourworldindata.org/coronavirus

タテ軸が対数のグラフだが、ヨーロッパは次第にカーブが寝てきているのが分かる。感染者数の増加が減少に向かっていることが想定できるだろう。また(7)を見ると、新型コロナウイルスのパンデミックによって亡くなる方たちが減少し始めてることもわかる。



図(6)https://ourworldindata.org/coronavirus
ところが日本は、直線的に右肩上がりで、今のところ予測がつかないのである。
では、インフルエンザウイルスのように、湿度と気温が上がるのと並行に、新型コロナウイルスも終息していくのだろうか。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の分析では、<アウトブレイク時に気温が摂氏3~13度だった地域で、最大数の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生していることが判明した。これに対し、平均温度が摂氏18度を上回る国では全体の5%未満しか症例が発生していない>そうだが、インドネシアやサウジアラビアのような熱帯の国でも感染が拡大していることを考えると、それほど楽観できそうもない。
「感染数を大きく減らすのに十分なほど感染速度が遅くなるのを期待すべきではない」ということだろう。
大阪大学元総長で免疫学の泰斗である平野俊夫さんは「なぜCOVID-19はこれほど恐れられているのか?」というブログにこう書いている。
<日本で流行は終息したとしても海外からウイルスが流入するし、国内でもまた流行が起こる。このように流行の波を作りながら最終的に国民の30~60%が感染して免疫を獲得するまでは終息はしないと考えられる>
(http://toshio-hirano.sakura.ne.jp/Hirano/xin_xingkoronauirusu_gan_ran_zheng_COVID-19.html)
そして、こう述べた。
「重要な点は、1~2ヵ月で収束することはなく、ワクチンや治療薬が出現しなければ1~2年、あるいは3年はかかる、いわばマラソンレースであるという点です。だからといって過度に恐れる必要はないが、決して油断してはいけない」
これだけ地球規模に広がれば、おそらく1918年のスペイン風邪のように第二波、第三波と感染爆発が続きながら次第にその波が終息していくのだろう。新型コロナウイルスとの戦いは長期戦になるということは覚悟した方がいい。